黒い人と白い人
そのお隣に住んでいる白い人も好きになったのはその4ヶ月後。
どっちも好きな人だから、黒い人と白い人が仲良くしているのが嬉しかった。
ちょっと立ち話しているだけでも心が踊ったし、2人が一緒に仕事をしている姿を何回も見ては元気をもらっていた。
ある日、黒い人が風邪を引いた。
昨日雨の中傘を差さないでいたからって言っていた。
すぐ治るよ、と弱々しい顔で言っていたけど、私の心は晴れなかった。
黒い人が仕事を休んでしまった分、白い人は沢山働いた。
時折心配そうにこちらを見ている時もあった。
黒い人の長期入院が決まった。
どうやらただの風邪じゃなくなってしまったらしい。
黒い人が仕事を辞めた分、また白い人の仕事が増えた。
やがて白い人は黒い人の穴を埋めた救世主としていろんな人に信頼されるようになった。
もっともっと仕事が増えて、彼の周りには人が沢山いた。
私は、黒い人の看病をしながらそれを見ていた。
なんだか、とてもまぶしかった。
仕事を辞めてから黒い人は前よりも明るくなった。
そのうち治るから、と笑う顔は現役さながらで、私は少し安心した。
でも、近すぎる家から漏れる明るい光が、幸せそうな空気が、時々羨ましくてしょうがない。
何度も考えてしまう。
"もしあの雨の日に傘を差していれば。"
そういう次元の話ではないのは分かっているけど、私の心は未だに晴れなかった。
いつのまにか、白い人は避けたい人なっていた。
白い人の活躍を見ない振りし続けて、3ヶ月が過ぎた。
今度、黒い人のところに仕事で取材に来るらしい。
私は、笑って許せるのだろうか。